
2025年7月21日
人の個性に合わせて仕事をつくる。シフトフリーやアバター接客を実践する一般社団法人NIMO ALCAMOの視察報告

新しい働き方の創出を通じた就労支援などを行う、一般社団法人NIMO ALCAMO代表の古市 邦人さんにお話を伺った。今回訪問したチャイの店では、24時間いつ来ていつ返ってもいい「シフトフリー」や、姿を見せずに働ける「アバター接客」、一人分の仕事をシェアする「ワークシェア」など、実験的な働き方が導入されていた。
「人が仕事に合わせて無理するのではなく、人の個性に合わせて仕事をつくる」
古市さんは、これまでサポステ事業などの就労支援をする中で、困っている本人への支援だけでは出来ることに限界があり、今のルールでは働けない人が、働ける職場をつくりたいと思うようになったとのこと。
店舗があるのは競艇場にほど近い、北加賀屋という町だ。昔は造船の町として知られていた地域らしいが、最近はアートの街として若者やインバウンドの旅行者も多く訪れる。お洒落なチャイの工房兼カフェは、古い長屋をリノベーションした物件で、隣にはサンドイッチ屋さん、書店の入る複合型の店舗になっている。視察の日は店休日だったが、ふらりとやってくるお客さんも何組かあった。

チャイ専門店「Talk with _ 」では、実店舗に加え、オンラインショップでギフト商品の販売も行っている。ここで働くシフトフリーのスタッフは現在6名ほどが在籍。注文が入ると、スタッフは24時間、自分の都合のよい時間に工房に“出勤“し、オーダー表に従ってスパイスと茶葉の調合を行い、商品セットを完成させて“退勤”する。その後、古市さんたちが検品し、お客様へ発送するという流れだ。
スタッフは、法人が雇い入れる「雇用契約」ではなく、「業務委託契約」を結び、働いて いる。この雇用形態は、今の世の中の働き方に対する違和感から生まれたという。現在、最低賃金が時給1,000円以上となり、それに伴い働く人に求められる成果や期待値も上がり、そこに対してプレッシャーを感じてしまう人にとっては、大きな負担感となっている。そこで、時給300円くらいの働き方ができないかと考える中で、いつ来て、いつ帰っても良い「シフトフリー」の働き方を業務委託契約で実験的に開始した。
今の所、大きな問題は起きていないそうだが、スタッフの選考の際には「細やかな作業ができるか」、「丁寧な仕事ができるか」、といったスキルについて一定の基準を設けている。
「働いてもらう以上は、仕事としてプロフェッショナルを求める。」
これは、今回の視察中に体験した「アバター接客」の仕事にも共通している考え方だ。
この日、我々が参加した『世界で一つだけの、オリジナルチャイ調合ワークショップ』には、これまでに174回の開催で360名が参加している(2025.7.20時点)。ワークショップはストアカから予約することができ、3,500円の受講料には、レッスン料金、1杯分のチャイに加え、お土産のチャイの費用も含まれる。
世界で一つだけの、オリジナルチャイ調合ワークショップ / 古市 邦人

「アバター接客」では、カウンターの目の前に置かれたタブレット端末の画面に映る講師のMai先生がメインでチャイの作り方を教えてくれる。チャイに使われる基本的なスパイスの説明、どんな味のチャイをつくるのか、それによってスパイスの配合をどのように変えればよいのか、非常にテンポよく、楽しくかつ丁寧に教えてくれる。時折、実店舗にいる古市さんがポットに ミルクを入れて置いておくなどのサポートをしながら、ほぼお一人で、受講生とのコミュニケーション、進行をまわしておられ、その様子はまるで、テーマパークのアトラクションで、参加者をナビゲートするクルーのようでもあった。

ビジネスとして、お金をもらってサービス提供をする以上は、そこに対して妥協や甘えはない。本来働くためのスキルや知識を持っていても、事情により人前に出られなかったり、長時間の就労が難しかったりする人にとっては、これまでと違う、より柔軟な働き方の選択肢となり得ると感じた。
こうして、約1時間のワークショップはスムーズに終わり、我々が自分の手で調合した世界で一つだけの、オリジナルチャイをお土産に、今回の視察を終えた。

今後、いき〇研究会としても、「働く」をテーマにした場をつくることについて、地域のサポーターの皆さんにも協力を仰ぎながら、一緒に取り組んでいきたいと考えている。ぜひ、この取り組みにも、仲間として加わって頂きたい。
日時:7/3(木)13:00~
訪問先:一般社団法人NIMO ALCAMO
住所:大阪府住之江区北加賀屋2-4-2 「Talk with _」
参加者:永見・藤吉
シェアする